【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
「まあ、同居するって分かったときから黙っているつもりはなかったし……いいか」
「む、村城くん……なの?」

 聞くと、困り笑顔で「他にいないでしょ」と返ってきた。

 村城くんはドライヤーを片付けながら簡単に説明してくれる。


「いつもはウィッグと眼鏡で顔隠してるからね。この顔のせいで女の子が寄って来て困ること、結構多いんだ」

 そして私に困り笑顔を向けた。

「だから、学校では黙っててくれると助かるかな?」
「え? あ、うん」

 まだ困惑しているけれど、別に言いふらすつもりはなかったからすぐに了承の返事をする。

 そうすると「良かった」って言って村城くんは笑った。


「っ!」

 その笑顔に勝手に心臓が反応する。
 ドキッと跳ねて、そのままトクトクと早まる。

 や、ヤバい……顔が好みすぎる。

 ただイケメンでカッコイイってだけじゃない。
 その顔のつくりは私の好みど真ん中だった。


 ドキドキする胸を押さえてそれ以上何も言えないでいると、そんなあたしに気づいた村城くんがスッと目を細める。

「どうしたの? 俺の素顔見て好きになっちゃった?」

 薄く笑うその表情が冷たく見えたことに戸惑ったけれど、聞かれたことには正直に答えた。
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