僕だけが知っている、僕たちの奇跡
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『雨の日に出かけるのってめんどくさくない?』
『でも今日はショッピングデートをするって決めてたでしょ! あのおっきい観覧車にも乗るの!』
『雨の日の景色を見たって楽しくないでしょ……』
『普段見ない景色だからいいんでしょ! ぐだぐだ言ってないで早く行くよ!!』
半ば引っ張られるように活発な彼女に外へ連れ出されたあの日。
青信号の横断歩道に突っ込んできた車に運良く気づいた僕は、迷いなく彼女を突き飛ばしたあと運悪く犠牲になった。
雨か涙かで顔をぐしゃぐしゃに濡らした彼女は、救急車が来るまでずっと血だらけの僕を抱きかかえながら泣き叫んでいて。
『私が無理やり外に連れ出したから』
『デートなんかしなきゃ良かった』
『……私だけ生きててどうするの』
君は雨の中に温かい雫を混ぜて僕の上に次々と落とした。
普段はポジティブの塊である君が、柄にもなく後悔ばかりを口にしたのにはびっくりしたよ。
君とのデートは楽し過ぎて『雨の日でも出かける価値があるな』って密かに考えを改めていたのに、それを否定されたのは悲しかったな。
もっと絶望したのはもう君の涙を拭ってあげられないことなんだけど。