俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
次の日から、鈴堂綾香は音夜に纏わり付くだけではなく、美夜の悪口を触れて回るようになった。

みんなは、どちらを信じれば良いのだろうと戸惑っているように見えた。

未婚の母として、ここに駆け込んだのは事実だ。
わけありなのは間違いなかった。

気を使ってか、今までプライベートな過去は聞かれたことがないし、自分からも、なぜひとりなのか、相手はどうしているのかは話したことがなかった。

音夜は気づかってメールや電話をたくさんくれるが、うまく話せないでいた。
大丈夫だから気にしないでとしか返せていない。


『大事な話をメールでごめん。俺達のこと、公表しようか。俺はしたい。みんなに認めてもらって、ちゃんと美夜と夜尋を守りたい』


嬉しくて、涙が出るほど嬉しすぎて、返事を書けなかった。
何も返せないのだ。


(公表して、守って貰って、夜尋もわたしも安泰で……それで? それで音夜は、何を得るのかな)


後ろ盾になるようなものはない。
鈴堂のように会社の利益にもならない。


(そんなんで、いいのかな)


そうだね、お願いしますだなんて、軽々しく口に出来ない。音夜が優しいから、余計に甘えてはいけない。

返事を待つ音夜にも余所余所しくなってしまい、視線を合わせるのが辛かった。


(どうしてわたしは堂々とできないんだろう)
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