俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
星林亭(せいりんてい)を出ると目の前は山である。
冬はちょっと歩けばゲレンデだ。

初夏から秋にかけては、宿に荷物を置いてのハイキングがお勧めで、45分程度で一周りできるお手軽な初級から、中級ほどのコースが幾つかあった。


初級コースを5分ほど奥へ進んだ箇所に開けた場所があり、そこには展望台がある。
下界を見下ろすためではなく、空を見上げるためのものだ。


いくつかのベンチが設置され、日暮れから宿泊客で賑わう人気の場所となる。

音夜と美夜は、少し二人でゆっくりと話を、とお膳立てしてくれたみんなに感謝をしながら、そこで星を眺めながら話していた。



今夜は薄い雲が残るが、上々の空だ。
藍色の幻想的な空に、満天の星。
ぽつりぽつりと光りが横ぎる。流れ星だ。

縁結びを願ってこの地を訪れる人たちは、流れ星に願いを祈る。



「ごめんな。俺が当時、ちゃんと調べていたら美夜はこんなにも長く辛い思いをすることはなかったのに」

「ううん。なにも証明も出来ずに泣き寝入りして、逃げたのはわたしなの。信じてくれる人がいなかった。そういう人間関係を構築できていなかったのは、わたしの責任だよ」


「俺はちゃんと信じていたぞ」

「ふふ、そうだね。ずっと信じて、想ってくれていてありがとう」

「ねー、もうおーくん、パパってよんでいー?」



ベンチの周りでちょこちょこと走り回っていた夜尋が、音夜の膝によじ登った。
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