俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
「うん……」


胸から顔を見上げると、まっすぐな瞳とぶつかった。
美夜はゆったりと弧を描く唇に向かって、自然と顔を寄せる。

美夜《みよる》が首を伸ばすと同時に、音夜《おとや》が夜尋《やひろ》の瞳を手のひらでそっと塞いだ。


「うー?」


夜尋が不思議そうにしている。


「――――美夜、俺と結婚しよう」

「―――はい」



たくさん愛してくれる音夜に、自分もたくさんの愛を返したいと思った。


一生、この人と添い遂げたい。

滲んだ視界の端に、流れ星が見えた。きっと、この願いを叶えてくれる。


二人は時間が許す限り、何度も啄みあった。


音夜は久しぶりの美夜の唇に、場所も、夜尋がいることも忘れてぐっと身を乗り出して深く貪った。
後頭部に回った手に、焦りを感じた。


「…は、んん、む…ちょ、ちょっとまっ……」


美夜の焦った声など、耳に入らない。


周囲は暗く人気が無いとはいえ、ちょっと大胆すぎる。


(夜尋もいるのに……!)


押してもひいても離れない唇に焦った。

音夜が我を忘れて夢中になり、うっかり夜尋の目隠しをする手が緩んだとき、


「いなぃいなぃ、ばあぁーーーーー!!」


と、嬉々として手を払いのけながら万歳をした夜尋によって、二人の秘め事は終了となった。
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