俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
「本日が研修最終日となりました。
勝手のわからないわたしに色々ご指導賜りまして、ありがとうございました。

ウォッチオーバーシステムも改善が必要な部分も見られましたが、当グループの電子部門が誇れる素晴らしいシステムで、それを活用し、様々な立場の人を受け入れる環境はすばらしかったです。

こちらで学んだシステムをぜひ他のグループ会社にも取り入れ、グループ全体で働きやすい職場の提供に努めたいと思います」


その日の夕礼は、必要最低限のスタッフ配置にして、ほとんどの従業員が集まった。


丁寧にあいさつをした音夜に飛んだのは盛大な拍手と……

「美才治さんって、本当は美夜ちゃんを確保しに来たんじゃないですか?」
という野次だった。

役職的にはかなり上のはずで、普通であればそんな軽口は叩けないはずだったのだが、それを赦してしまうのは、音夜の謙虚で真摯な人柄と、このアットホームな雰囲気の旅館のせいかもしれない。


「あの、盛大にぶちまけてからなんですけどね、ちょっと言い訳させてください。手嶋さんに会ったのはほんと、偶然ですからね。わたしは研修のためにここに来たんですから」

「素敵! 周りに邪魔されたりしていろいろ抉れたけど、夜尋くんに恵まれたことも然り、二人は運命だったってことね」


花恵が目を輝かせた。


「研修相手が美夜ちゃんってわかった途端、一緒のシフトふやされてましたよねぇ」

女将がふふふと笑う。


「女将さん。最後だからって隅々まで暴露をするのはやめてください」


恥ずかしそうに頭をかく音夜に、みんなはクスクスと笑った。


「美才治さんは明日山を下りちゃうけど、美夜ちゃんはしばらく残るんだっけ?」


隣の席の花恵が聞いた。


「はい」


音夜が本社に戻ったら、そう簡単には会えなくなる。
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