俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
思い当たる本人だと確信した音夜は、驚きと怒り安堵と喜び。たくさんの感情をごちゃまぜにした顔をした。

怒っているとしたら、ちゃんと連絡を取らなかったことだろうか。
目が潤んで見えるのは、一晩過ごしただけの女を心配してくれていたのか。

顔を合わせればふてぶてしい態度しかとらなかったが、実は優しい男だと知っていた。



「今までどこにいた! なんで連絡もなしに消えた!? この4年、俺がどれだけ探したと思っているんだ!」


腕をつかむ力の強さが、音夜の気持ちを表している。
怒鳴られて、ひゅっと首を竦めた。


(探していた……?)


なぜだろう。自分はその理由を知っている気がしたが、深くは考えないようにした。


「いつからここで働いているんだ」


怒鳴りたいのを抑えるようだ。美夜は顔色を窺いながら、おずおずと話す。

「ええと、4年……前から……」

「会社を辞めてすぐってことか」

「うん……まぁ……」


首を竦めながら答えると、音夜は舌打ちをする。

「くそっ、灯台下暗しってこのことか、まさかMISAIJIのグループ会社にいるなんて……」

皺の寄った眉間にちらりと視線をむける。なんでこれほど怒っているのかわからなかった。

だって、一夜の間違いだったじゃないか。ただの顔見知り。同業者で、ライバル。
そんな立ち位置だったけれど、つい酔った勢いで一晩。それだけの関係だ。

もしかして、ホテル代のことで怒っている?
いろいろ落ち着いてからは毎月お金を送っているけれど、当初は踏み倒して逃げたと思われたに違いない。それに、まだ全然足りないのかも。
一夜を過ごしたあの豪華絢爛な部屋は、いったい一泊何百万したのか。

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