俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
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手嶋美夜が志波音夜と出会ったのは、今から五年前の話。美夜が入社二年目のころだ。
大学を卒業して美夜が就職したのは地元の不動産会社で、地域密着型の中小企業、株式会社プロパティーであった。
ちょっと昭和のお堅い会社で、女に不動産営業は無理だという中堅どころが多い会社ではあったが、上層部はそんな社内風土を変えていきたいとの方針で、美夜はプロパティー社、女性初めての営業部配属となった。
同期は、自分以外全員男。先輩営業も全員男で、事務方の女子には紅一点を良く思われなかった。
ちやほやされて調子にのっているとか。しかも、一番人気の人の下について指導してもらうことになって、男漁りに入社したなどという過激な悪口まで聞こえたときはさすがに憤りが収まらなかった。
―――――配属先は選べなかったはずですけどね?!
じゃあ自分も営業やりたいと言えば、と零れそうな悪態を飲み込むことはざらだった。
会社は女性営業を増やしたいのだから、きっと転属希望だって聞き入れてくれるはずだ。
男に媚をうっているなどと言われないように、美夜の外見は瞬く間に派手になった。就業規則ギリギリの明るい髪色を、夜の街に繰り出すんですかと問われるほどゴージャスに巻いて盛った。控え目ならOKと言われているピアスも大き目のものを愛用する。
つけまつげをして、太めにアイラインを入れて、真っ赤な口紅を塗る。爪は少しだけ伸ばし、控え目の色でシンプルだがジェルネイルを施していた。
これが、手嶋美夜の武装。仕事中は常に戦闘態勢であった。