俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
5
◆
――――そして無事、星林亭で住み込みで働くこととなり、今に至る。
久しぶりに見た顔に、見ないふりをしていた気持ちが爆発しそうになった。
唯一、味方になってくれた人。
あの時の、満たされた気持ちを忘れていない。
たった一度きり。迷惑を掛けたくなくて逃げたけれど、本当はあの時から惹かれていたのかも。
栗色の髪。珍しいヘーゼルの瞳。
音夜にそっくりな男の子が生まれた時から、叶わない人との家族に憧れていた。
一人で頑張るのだと決心はしていたが、たまに揺らいだ時に思い出す人は音夜だった。
それが、つらい時に支えてくれたからなのか、子供の父親だからなのかはわからない。でも、あの日から、意識していた。特別な存在なのは間違いなかった。
「ご、ごめん。色々事情があって。あの、ちゃんとホテル代なら払うから」
「ホテル代?」
「え? う、うん……。あの、最後に、会った日の……」
音夜は数秒考えて思い立ったらしく、舌打ちをした。
「そんなのいらない。なんだよそれ。意味がわからない」
「迷惑かけたのに申し訳ないけど、一括は無理で……でもこれからもちゃんと、毎月払うから」
「これからも毎月……? まさか、会社に俺宛で毎月現金書留を送ってきたキモイ犯人は美夜か!」
音夜はあっけにとられた。
顔を覆い、このバカと口走る。
「キモイ!? ひとのなけなしのお金をっ」
「キモイだろ! どこの誰かもわからない奴から名指しで金が届くんだぞ!? しかも質素な茶封筒で! 秘書からはストーカー女からの結納金で、満額になったら正体を現すだとか面白がられるし」
「だ、だってあんな豪華なホテルに泊まっちゃって、申し訳ないと思ったんだもん……」
「いや、俺、そういうの心配するなって言ったよ。だから、気にしないで辛い気持ち発散しようって」
「いつ? バーで?」
「4年も前のこと、細かく覚えてない」
――――――――確かに。
一介の営業マン志波音夜ではなく、この男がMISAIJIグループの御曹司、美才治音夜であるなら、大した金額ではないのかもしれない。
でも、憶えていない。
前後不覚になるほど酔っていたんだ。申し訳ないが、聞いた記憶などカケラもない。
――――そして無事、星林亭で住み込みで働くこととなり、今に至る。
久しぶりに見た顔に、見ないふりをしていた気持ちが爆発しそうになった。
唯一、味方になってくれた人。
あの時の、満たされた気持ちを忘れていない。
たった一度きり。迷惑を掛けたくなくて逃げたけれど、本当はあの時から惹かれていたのかも。
栗色の髪。珍しいヘーゼルの瞳。
音夜にそっくりな男の子が生まれた時から、叶わない人との家族に憧れていた。
一人で頑張るのだと決心はしていたが、たまに揺らいだ時に思い出す人は音夜だった。
それが、つらい時に支えてくれたからなのか、子供の父親だからなのかはわからない。でも、あの日から、意識していた。特別な存在なのは間違いなかった。
「ご、ごめん。色々事情があって。あの、ちゃんとホテル代なら払うから」
「ホテル代?」
「え? う、うん……。あの、最後に、会った日の……」
音夜は数秒考えて思い立ったらしく、舌打ちをした。
「そんなのいらない。なんだよそれ。意味がわからない」
「迷惑かけたのに申し訳ないけど、一括は無理で……でもこれからもちゃんと、毎月払うから」
「これからも毎月……? まさか、会社に俺宛で毎月現金書留を送ってきたキモイ犯人は美夜か!」
音夜はあっけにとられた。
顔を覆い、このバカと口走る。
「キモイ!? ひとのなけなしのお金をっ」
「キモイだろ! どこの誰かもわからない奴から名指しで金が届くんだぞ!? しかも質素な茶封筒で! 秘書からはストーカー女からの結納金で、満額になったら正体を現すだとか面白がられるし」
「だ、だってあんな豪華なホテルに泊まっちゃって、申し訳ないと思ったんだもん……」
「いや、俺、そういうの心配するなって言ったよ。だから、気にしないで辛い気持ち発散しようって」
「いつ? バーで?」
「4年も前のこと、細かく覚えてない」
――――――――確かに。
一介の営業マン志波音夜ではなく、この男がMISAIJIグループの御曹司、美才治音夜であるなら、大した金額ではないのかもしれない。
でも、憶えていない。
前後不覚になるほど酔っていたんだ。申し訳ないが、聞いた記憶などカケラもない。