俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
つわりが始まり、次の仕事をさがすこともままならなかった。妊娠しているとなるとパート職も見つからず、もしあっても収入が足りず生活できない。

住居と仕事を与えてくれ、さらに子育てまで面倒をみてくれるなんて、なんて素晴らしいシステムかと思った。


(まさか自分がMISAIJI(ミサイジ)グループで働くとは思ってもいなかったけど……)


前職を辞めるきっかけとなったトラブルに、MISAIJIグループの会社が関わっていた。

だから息のかかっていないこの旅館は、次の就職先としては最高の条件であったが、美夜が就職してすぐにこの旅館もMISAIJIグループの傘下となってしまったのだ。

経営難となっていた旅館への出資を条件に、『ウォッチオーバー』システムの検証実験の場として、買収されていたわけだ。
そうとも知らず、傷を抉るMISAIJIにおめおめと飛び込んでしまった。


働き始めて暫くは、もしMISAIJI本社に自分の名前が知れ渡っていたら辞職を迫られるかとびくびくしていたが、さすがにそれは自意識過剰だったようだ。

グループ全体で、何十万人も働いている。


たかだかその中の一つの会社で起こったトラブルを、一々把握などしていられないだろう。
そもそも美夜の前職はただのライバル会社で、取引先でもなんでもない。

MISAIJIという名前はあまり見たくないのが本音だが、国内最大手グループであるMISAIJIは観光、保険、自動車、商業施設、金融など多くの企業を抱える、日本有数の財閥グループだ。


その名前を目にしない日はない。
早々に気にしないように諦めるしかなかった。
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