俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
「はあ、まあ。会えたからいいや。とにかく、お金はいらない。二度と送ってこないで」

「でも」

「いらないの。今までのも返すから。あと、知ってると思うけど、俺、今日からここで研修なんだ。よろしくな」


この話はおしまいだと手を振ってさえぎった。


「はい……」

「ウォッチオーバーシステムを全グループで定着させたくて勉強しに来たんだ。ここが第一人者だから。
女性の離職率を減らして、時代に合わせた働きやすい会社にしたい。そういえば、スタッフを一人つけてもらう予定だけど、どういう人か知ってる?」


音夜の眼差しは力強かった。経営者の目だなと思う。
その担当スタッフは自分だと言えなくて、体を小さくした。


どうしよう。夜尋《やひろ》のことをなんて説明しよう。

きっとバレてしまう。
だって、夜尋は音夜にそっくりだ。ハーフのような栗色の髪に、ヘーゼルの瞳。

身籠もったことを話せもしなかったくせに、互いの名前にある、夜という字を充てた。


(どうしよう……)


勝手に生んだことを怒られるんじゃないか。
もう誤魔化せないのなら、自分から告げた方が良いんじゃないか。

御曹司の隠し子だなんて、スキャンダルだし迷惑に違いない。
それよりも、子供を取り上げられたらどうしよう。


色んな悪いパターンを想像してしまい、顔を青くしていたその時、夜尋のはしゃいだ声が飛んできた。


「ママァ!」
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