俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
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音夜の有能ぶりは、数日で従業員達に周知された。
音夜は、美夜と同じスケジュールをこなしてもらっていて、始業も休憩も就業も同じ時間で、気恥ずかしさと緊張があった。
覚えることも多いし立場もあるため、音夜は仕事中は色恋を態度にださない。
それに美夜は安心をして、仕事に集中することができた。
(出来る人って、なにやらせても平均以上にしあげてくるんだよなぁ)
従業員の名前と顔もすぐに覚えてしまい、一度教えたことは忘れなかった。
仕事内容は初見のはずなのに、数度繰り返すと、こうしたほうが効率が良いのでは? と改善提案まで出してくるのはさすがと言うべきか。
顔良し器量良し愛想良しでたちまち人気者となる。
以前より性格がまるくなった気がした。
それとも、美夜と会うときはとげとげしかっただけで、普段はこんな感じだったのだろうか。
優しいし、全然偉そうじゃない。かといって腰が低いわけでもなく、仕事をこなすたびに信頼を得ていった。
そんな音夜だが、彼にも苦手なことがあるようだ。
「ああ! なんでうまくいかないんだ」
音夜は途中まで畳んでいたゆかたの帯をほどいて、一本にもどしてしまった。
「綺麗でしたよ」
「いや、手嶋さんのもに比べると形がいびつだ。どうしてもゆるくなってしまうし」
星林亭のゆかたの帯は、五角形に畳み、浴衣の上に置いておく仕様となる。
これがけっこう好評で、畳み方を教わりたがるお客様もいるくらいだ。
音夜は畳み方の手順を覚えるのは早かったのだが、どうにも不器用だ。
自己分析の通り、美夜が作ったものより一回り大きい。きゅっと綺麗に締まって、お手玉のようにふってもほどけないのが一流の五角形である。
「ネクタイと一緒です。何回かくりかえせば慣れるし、美才治さんならすぐに上手くなれますよ」
畳の上にきれいに伸ばし、口を曲げながら再チャレンジしている。
「あ、そこ」
ゆるくなってしまう原因を見つけ、横から手を出した。音夜の手に自分の手を添えて力加減を伝える。
「ここを畳むとき、もう少しきつくするんです。左手でここをきゅっと抑えながら五角形を回していって……ほら! どうです?」
綺麗にできあがった帯をかかげる。喜びながら横を向くと、思いのほか近くに音夜の顔があった。