俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
「はぁ、ゆっくり愛を語るもないな」
音夜は軽く息をつくと、肩を竦めた。
「仕事と家事と育児で、こんなにも自分の時間がないとは知らなかった……」
同感だ。かと言って、仕事中に何をしているのだと反省をする。
「あの、今夜は寝かしつけの後、仕事がないの。寝ないようにするから、改めて時間貰えるかな……」
「それって、いい話?」
「え?」
「俺のプロポーズを断ろうとしているんなら聞かないよ」
「え、あ、ちが……」
「違う? じゃあ、受けてくれる? 俺は美夜と夜尋と、幸せになりたい」
「あ、あの、その……」
「ねぇ、美夜。せめて、俺がここにいる一か月の間は断らないで。
美夜が俺の家とか、立場とかを気にするのはわかっているんだ。でも、今だけは俺自身のことだけを考えて、俺だけを見て欲しい。
夜尋の世話もさせて。お試しでいい。一か月、三人で家族として過ごそう……ずっと叶わなかったのだから、それくらい……ゆるしてくれるだろ?」
音夜の瞳が、逃がすものかと光った。
かわいらしい懇願と、情熱的な告白と、絶妙なポイントで弱みを責めてくる。
そんなことを言われたら断れない。
音夜から、夜尋を奪ってしまった罪悪感に苛まれたのは、彼の作戦のような気がしていた。
見事に話術に嵌まっている。
(そういえばこの人、こういう手法で顧客を落としていたんだった……)
懐かしいことを思い出して、複雑な気持ちになった。