俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
「そうねぇ。手嶋(てしま)さんは唯一、出産前からここで働いてくれている貴重な人材よね。

妊娠中の働き方も経験してるし、お子さんの年齢も３歳でしょ。ウォッチオーバーを頻繁に使うから、ひとり親がどうやって子育てと仕事を両立しているかわかりやすくていいかも。さっきも伝えた通り、変則で働いている人を知りたいわけだから、寧ろあちらの希望通りよ」


頷きながら次々と納得の材料をあげてくる女将に、ほぼ諦めの境地に入った。



「手嶋さんはお客様対応もすばらしいし、仲居の仕事も文句ないいわ。よし、お願いできるかしら」

女将がポンと手を叩き決定となった。
美夜はがくっと首をたれる。


「美夜(みよる)ちゃん、がんばってね。美夜ちゃんなら大丈夫だよ」


誘導の主犯格となった花恵は、んふふと笑い美夜の背中をたたいて励ました。
満足げな笑顔に、自分が担当にならないために、美夜を生贄にしたのではないかと疑いたくなった。


（仕方ない、引き受けたからには頑張ろう）


憂鬱な気持ちはため息となって口から零れたが、責任感も根性もあるほうだと自負している。


まさか次の日、とんでもない人物に再会することになろうとは思わず、その時の美夜はまあまあ前向きであった。
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