俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
「将来、どんな家に住みたいかって話をしていたんだ」


(それって、もしや三人で暮らす家とか……)


目を丸くすると、美夜が何が言いたいか分かったようで音夜は肩を竦めた。


「夢の話だよ。でも、夜尋は俺の部屋も作ってくれたみたいだな」

「おーくんいっしょいいよ! おうちいっしょならたくしゃんあそべるもんね」


小一時間ですっかり心をつかんでいた。


「音夜の呼び方、おーくんになったの?」

「音夜って発音難しいみたい」

「たしかにそうかも」


音夜はテーブルをみて驚いていた。


「もしかしてこれ、俺の分もある……?」

「迷惑じゃなければ。ちょっと時間も早いし、食堂で他の従業員と食べるかもって悩んだけど……」



豆腐のお味噌汁と野菜炒めと卵焼き。それに魚の煮つけがあるくらいだ。質素でちょっと恥ずかしい。

食材は自分で買い出しにもいけるが、厨房の発注と一緒に頼むこともできるため、次はもう少し手の込んだものを作りたい。


「すごい。和食好きなんだ。うれしいよ」


嬉しそうにした音夜に、気恥ずかしい気持ちもあったがほっとする。断られてもいいやだなんて言い聞かせながら作っていたが、本当は一緒に食べたかったみたいだ。


「夜尋に合わせてるから薄味だけど、煮物は料理長直伝だし自信あるんだ。夜尋、お絵描き終わりにしてごはんにしよう」


二人に手を洗ってきてもらうと、小さな三人でテーブルを囲む。

三人で向き合っていると、わけもわからなく切なくなった。今まで知らなかった幸せが、じんわりと浸透するようだ。

音夜は畳にあぐらをかき、気取らずに笑ってくれていた。普段の彼は御曹司で、きっとこんな風にご飯を食べる人じゃない。
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