俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました

「あーおしゃかな」

「夜尋は魚好きなのか?」


うれしそうにした夜尋に、音夜が頭をなでた。


「おさかなしゅき。おにくもしゅき」

「何でも食べれて偉いな。野菜はどうだ?」

「たべれるよ。もうおにーちゃんなの。えらいのねー」


えへんと威張っているので、ピーマンを差し出した。


「お。じゃあこれもがんばろっか」


目の前に緑色がくると夜尋はふいと顔を背けた。


「めっなのー! にがーのー!」

「おにいちゃんだって言ったじゃない」

「これおやさいじゃないの。むしなの」

「野菜です。ピーマンです。ほら、ママも食べるよ」


食べて見せるがびくともしない。

しばらく攻防を繰り広げていると音夜が笑った。そこで美夜は新しい手法を思いつく。


「おーくんもママも食べるから、三人でいっせーのでぱっくんしよう」

「えっ?!」

「え?」


音夜がびっくりしているので、美夜は首を傾げた。


「……俺も食べるの……?」

音夜の顔が真剣になる。


「え、食べないの……?」

もしや。


「だって、めちゃくちゃ苦……」

「んんっ!!」


不都合な発言を咳払いで遮った。夜尋がもっと嫌いになってしまうからやめてほしい。

それにしてもピーマンが苦手な御曹司だなんて……なんでも完璧な男と思っていたが、意外と子供舌のようだ。

吹き出すのを我慢して宣言する。


「3人で一緒にぱっくんしましょーね?」


男二人は絶望的な顔をした。
その顔がまたそっくりで、切なさと嬉しさで胸がいっぱいになる。
体の奥が、むずむずとした。

< 63 / 123 >

この作品をシェア

pagetop