俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
毎日顔を合わせているせいか、夜尋はあっというまに音夜に懐いた。
お風呂も音夜と一緒にはいるようになって、美夜は出産後、初めて一人でゆっくりと湯舟につかった。
たったそれだけで、ずいぶんと気持ちがほぐれた気がする。
さらに夜尋は添い寝まで甘えるようになって、ここ数日は寝かしつけもお願いしていた。
「今日も音夜といっしょに寝るの?」
「おーくんがいいのー」
友達だとでも思っているのか、初めて大人の男に甘えられるのでうれしいのか、とにかく夜尋は音夜ブームだった。
音夜も、父親として一緒にいたいのだと言ってくれるが、こんなに甘えて大丈夫なのだろうか。
また一人になったときに、思い出してしまいそうな自分が嫌で、消極的になってしまう。
「おーくん、あしゃいないの、めっ!」
「あー……そうだなぁ」
夜尋が寝れば音夜は自分の部屋に帰るのは当たり前で、朝起きると、一緒に寝たはずの音夜がいなくなっているので、怒っているのだ。
「夜尋、お仕事なんだから、わがまま言って困らせちゃだめだよ」
「おーくんもずっといっしょにねんねするのー!」
夜尋は音夜にぎゅうと抱き着いた。
音夜はまんざらでもなさそうに表情をくずす。
「じゃあ、今日は朝までいっしょにいようか」
抱きしめ返して頬ずりをした。すっかり父親の顔だ。
「えっ!?」
「やったー!」
夜尋の歓喜と美夜の叫びは同時だった。
ひとり親の生活を実体験でという名目で、一緒にいるのを不自然に見えないように誤魔化してはいるが、朝まで一緒にいたら、さすがにうがった目で見られてしまう。
それでなくても保育士さんには
「美才治さんって、ほんと素敵ですよね。育児もお手の物だなんて完璧すぎる。ほんとうのお父さんみたいですね」と囁かれるし、
花恵には「美才治さんと夜尋くんってなんか似てるよね」などと言い出しているのだ。
この際、結婚を迫ってみたらなんてからかわれたが、美夜はその冗談に笑えなかった。