俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
夕方の勤務は16時、17時、18時開始だ。

夕食の支度からお世話が主である。だが美夜は15時から1~2時間ほど食事の仕込みを手伝い、託児所に夜尋を迎えに行くと、夕飯、お風呂、寝かしつけを行い、夕礼に顔をだす。それから夜勤の人たちに交じって温泉の管理や備品補充などの作業をすることになっている。


一般的な会社でフルタイムで働いていた為、不規則な勤務に心配事は尽きなかったが、細切れの働き方も慣れればなんとかなるものだった。

幼いわが子に添い寝をしてあげられないのは辛いが、部屋につけられたモニターがスマホへ室内の様子を送ってくれている。逐一状況を確認できるし、旅館内であれば、すぐに駆け付けることができる。

自分が行けないときは、周囲に助けを求めることができて、こういった、子育てに特化した柔軟な働き方ができるのはとてもありがたい。

美夜は夜尋の生え際をさらりと撫で、寝顔で今日のエネルギーを補給した。


「ままぁ……」


むにゃむにゃと寝言で呼ばれ、頬を緩めた。


(さぁ、今日もがんばろう)


毎日が勉強である育児。
疲労はたまるばかりだが、夜尋(やひろ)の為ならどんなことものりこえて見せる。
あくびを一つすると、ウォッチオーバーのアプリを起動したスマホをポケットに入れ、名残惜しい気持ちを引き摺りながら部屋を出た。


朝食の準備をしに食堂へ向かうと、調理部門の人達と女将がすでに働いていた。


「おはようございます」

「美夜ちゃん、おはよう。昨夜遅くに連絡があったんだけど、美才治さんの到着、11時くらいになりそうだって」

「承知しました」

「お部屋の清掃入ってると思うけど、抜けてお出迎えに同行してね。今日は支配人と一緒に、館内の説明に回って貰うから」

「はい」

「まだ30半ばなのに、かなりやり手らしくてね、さらにはものすごいイケメンなの。楽しみねぇ」


お金持ちで社会的地位もあってイケメンだなんて、世の中は生まれたときから公平ではない。


(さらに性格も優しければいいんだけどな)


ウキウキとしている女将を横目に、少し緊張を感じながら作業に入った。
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