俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
口調は高飛車だけれど、音夜が話しかけると嬉しそうにするのは、単なる嫌がらせではないことを物語っていた。


そうとはいえ、相手あってこそ。好きだから何をしても良いわけではない。


美夜にとっても、今の状況は不本意だった。
好きな人が困っているのに、名乗りを上げることも出来ず、付き合っていることも明かせずに、自分だけコソコソと隠れ回るのは性に合わない。


気を抜くと昔の猪突猛進な自分が顔をだして、「彼はわたしと愛し合ってるの!」だなんてドラマのごとく叫びそうになる。


二人を見かける度に唇を噛みしめてやり過ごした。
それが、音夜と夜尋の為だと思うから。


「わたしも、早く二人の仲を、認めて貰いたい気持ちは持ってるよ」

「それなら嬉しいよ」


音夜は眉を垂らした。


「もしかして、不安だった?」

「当たり前だろ。出鼻挫かれた感じでさ、やっぱり俺とは面倒くさいから、結婚したくないなんて言われたらどうしようって、今だって不安で堪らないよ」

「もう、夜尋もあなたをパパだって認めてる。覚悟を決めて話したんだよ。そんな簡単に考えを変えるわけない」

「夜尋の為だけ? 美夜は?」


回答に不満げにする音夜に、美夜は息巻いた。


「必死に大人のフリをしているところなの。体裁考えなかったら、わたしの音夜になにすんのよ! って何発かひっぱたいてると思う。
大事な人を煩わせないでもらいたいわ!」


鼻息荒く宣言すると、音夜は目を丸くした。


「わあ、その勢い懐かしい。一発じゃないところが美夜だよね。一本芯が通り過ぎてて、駄目なものは駄目って性格で、地主さんだけじゃなくて社内でも揉めてたのを思いだしたよ」


昔のことを引っ張り出してきたので、ぴくりと眉を動かす。止めてもらえないかと視線だけで非難した。


「まあ最終的に、その真面目さに折れた地主さんと仲良くなって契約もぎ取ってたけど。突っ走ってる背中見るの、好きだったなぁ」

「志波さん、やめてください」

「あ、その言い方懐かしい。なんか今、めちゃくちゃときめいた」


目を輝かせた音夜に頭が痛くなる。
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