『ペットフード』
「琉羽…」と小さく呼んだ。
ポケットからスマホを出し、指を動かす。
数秒後、そっと横を見た。
琉羽がスマホを手にしている。
きっと今送ったのを見てくれているのだろう…。
そして指を動かす琉羽。
返事はしてくれるんだ…。
少し嬉しいけど…。…けど…。
見ようとする苺美から逃げるように動きながらスマホを手にしている。
数分後、画面が光った。
【会議中…マジでめんどくさ、帰りたいわ。雨哥は?ビーズ?】
読んでからまた琉羽に目線を向けると、ちょうど入って来た電車に乗り、その姿は横へと消えて行った。
【お疲れさま。少しでも早く帰れるようにいのるね。ガンバ。私はビーズ】
いつもの雨哥で返す。

雨哥だって、琉羽に対しては可愛い彼女・人でいたいのだ。
琉羽にだけは、好かれていたい。
嫌われないように…。
帰ろう…。
信じよう…。
琉羽を信じるんだ。
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