『ペットフード』
「ねぇ、苺美。聞きたい事があるの。いい?」
琉羽の出張先にまで追って行った事を聞く時。今日、今をその時にする。
どんな答えでも許せない。許さないと思うけど。それがお前のやって来た、やった事なんだよ。分かれよ。今くらい分かれ。
聞く。答えよ(笑)なぜか笑える。おかしくなった方がラクだから。

「ねぇ…苺美。琉羽の事、好き?好きなの?」
真っ直ぐに聞いた。
「琉羽の事、好きなの?」の問いに苺美は首を横に振る。
嘘ではない。雨哥は『嘘』と思っても嘘ではない。
だって、だって苺美が好きなのは雨哥だから。琉羽じゃない。
伝えていないから『琉羽の事が好き』と思われても仕方がないけれど。
「琉羽の事…どう思ってるの?好きなの?」
再度聞かれ、苺美は首を振り否定をする。
「じゃあ、何で琉羽の事を追うの?」
聞いた。琉羽を追う苺美の事を。
どうして追うの?やめてよ。
「どうして追うの?」
その言葉で苺美の記憶に、脳裏に幾つかの琉羽の背中が浮かぶ。
追った。追ったけど…。それは琉羽の向こうに雨哥がいるから。
琉羽ではなく雨哥なんだよ。
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