『ペットフード』

鉄の扉の向こうは、まるで違う作りになっていた。
壁は窓以外、タイルに変わっていて、床は鉄板板に変えてあり、その上にベッドが置かれていた。
ベッドの下の部分の床は、マンホールのようになっており、そのフタをズラすと鉄の網床になっている。
「何…?何ここ…」の言葉に「入って」とタキがその部屋に入り、雨哥を呼ぶ。
「あ…、はい」と雨哥もその部屋に入る。
こんな事…現実…?そっか…。
やはり、どこか冷静なんだ…。
雨哥が部屋に入ると、その扉は閉められた。
重い音。
『ここでペットフード作ってるのか…。ペットフード…えっ?』
ここで雨哥は初めて迷いを見せた。
『ペットフード…苺美…が?』
タキもそれに気付いている。けれど、もう戻せない。戻らない。
全てが…起きる…知る…クル…。

その部屋は暗めではあったが、変な臭いがあったり、不気味な雰囲気などはなかった。
タキは次にゴム手袋を雨哥に渡す。
雨哥は何も疑わず着ける。
「いい?誰にも言わない事。それは絶対に守ってもらう。もし破ったら、その時はアンタも食品になってもらうからね。分かった?」
タキの声が冷たくなった。
「食品になってもらう」の言葉も自然に受け入れていた。
もう、この時には分かっていたんだ。
雨哥は頷いた。
言わない。言う必要も…ないだろう。
…琉羽…琉羽には…どうしよう…。
知られないようにすれば…いいか…。
そう考えた。今は…それで…。
「じゃあ…始めるから。気を確かに持ちなさいよ」
タキに強く言われる。

起きる…。
ついに知る。
ヤル…。
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