『ペットフード』
「ちゃんと見てなさい。いい?そして、覚えて。慣れて。絶対に他言するな。今から起こる事を忘れるな。黙ってろ…。決して忘れるな」
作業をしながら、タキは何度か言った。
隣から犬の吠える声も数回聞こえた。
この作業の時に鳴いていたのだと気付いた。
思い返せば、他で鳴き声はほとんどしない。
この作業の時だけ。

タキの手が動く。
雨哥の体が更に赤く染まって行く。
苺美の何かが飛び散り、雨哥の全体が赤に染められる。
術衣、合羽を着てて良かった。
聞いた事のある音が目の前で起きている。
有り得ない世界で染められる。染まる…。
タキが手を動かす。
音がする。
あの聞こえていた音に似た音。
それが続いて行くだけ。
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