『ペットフード』
何が起きているのか目では捉えている。
まだ理解は出来ていないけれど…。
これがあの時の音になるんだ…。
この作業であの音が聞こえていたんだ…。
思ったよりカンタンなんだ…。
そっかぁ…へぇ。
人ってこんな風なんだ。こんな風になるんだ…。感心しかない。すごいな、ふーん。
へぇー、苺美の中身…。あーぁ。
脳は何をどう捉えていたのだろう…。分からない。
おかしくなった?慣れた?苺美が嫌いだから何も感じないのかな?
何でかは分からない。ただ見ていた。見続けた。
赤い、赤いだらけの苺美。その中の何か。苺美の中身。
「覚えろ」とタキに言われたから見て覚えようとしただけ。
ここまでの間、そりゃ何度か吐いたのも覚えている。
でも、その度に平気になって行く。
平気になる度に苺美は小さくなる。
少しずつ少しずつ切断されて行く。
中身が出されて行く苺美。
たまに吐くけど、小さくなる毎に、平気にもなったんだ。その方がラクだから。
最後の方には涙だけだった。吐かなくなった。平気。
それよりも覚える、手伝うのが、そっちのが大変だったから。
今なら思い出せる。
何をしたのか、どうなったのか。
始まりの初めての秒…。
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