『ペットフード』
カップの中の赤。
「見てな」と言い、雨哥が見ているのを確認し、一気に行った事。
手に持っている赤の事。
タキが見せた動き。
台の上に置いた苺美の手首にアイスピックを突き刺し、そのまま左右に動かし、一気に引き抜いた。
穴の空いた手首から赤く溢れる液…苺美の血液をカップに注ぐ。手首から直に。

それを見て雨哥は床に落ちた。
雨哥の背中を見守る。戻るのを待つ。
「今はそれで良い」と雨哥に伝える。
『子の子は…大丈夫だ…』
タキにはこの時分かっていた。
理由はない。そう感じただけ。
だから、また自分で立ち上がるのを待った。
いつもなら、別の動きをしていた時間。
タキは雨哥を待った。
立ち上がり、雨哥の高さが苺美より上になるのを見る。
強い子。思ってたよりも凄い子だ。
立ち上がった雨哥のその手に、苺美の赤が入ったカップを渡す。
『この子は…強い…』
そんな思いがタキの中で強化されて行く。
予想よりも強く。大きく。
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