『ペットフード』

「見ろ」に素直に見る雨哥。
本当にいい子。
「この子の事をどう思っていたんだ？」
この問いに、少し戸惑う雨哥にタキは素直さを感じた。
「前は好きだった」
その答えだけで十分だ。もう十分。
「飲め」
ここからが大切なのだ。ここを越えさせなければ、子の子を守れない。乗り越えろ！

戸惑いすぐに飲めない雨哥。
それは当然の事で。
ここまで保った方が珍しいのだ。
なぜだかこの時、タキの心には『越えてくれ』と言う言葉だけが浮かんでいた。
自分でも理由は分からない。
けれど、なぜだろう…。
雨哥を消したくないと思った。
どうして？どうしてこの子は…。
こんなにも…。こんな気持ちに？
少しだけ…少しだけ苺美が雨哥に向けた気持ちが、雨哥への想いが今のタキなら理解できたのかも知れない。
同じとは言えないけど、分かる気がした。