『ペットフード』
メスで切り込みを入れる。
ゆっくりと型を取るように運ばれる刃先。
「もう…どれくらいやってるんですか?」
無意識だった。つい聞いてしまった。
タキは少しだけ…一瞬だけ動きを止めた。
「す、すみません」
タキの動きが明らかに違ったのを見て、咄嗟に謝る。聞くなんて…。
「別に良いよ。ここまで多くなかったんだ。…昔は…」
タキの中で何か思い出された。
すぐに消す。
「昔…」と雨哥はまた動き出すタキのメスの刃を見る。
どれくらいこの作業をやったのだろう…。
いつかは自分もやるのかな?と考えながら。
こんな普通に見れるのが “普通” になる。
もう “普通”。
< 190 / 251 >

この作品をシェア

pagetop