『ペットフード』

「昔からやってる…。多分、アンタが小さい時から。気付けばもう…。
ここまで誰かが誰かをなんて事、昔は少なかったしね。それがどんどん増えて行ったのはいつからなんだろうな。
気付けばニュースもそんな内容ばっかでさ。
それで…まさか自分が…」
またタキの脳裏に浮上しようとする。痛い。
『忘れてないよ。覚えてる。忘れる訳ないじゃんか』
こんな風に思ったのはどれくらい振りだろう。
思い出す事はいくらでもあった。もしかしたら毎回、思い出してすぐ消していたのかも知れない。
そうやってずっとヤッテキタンダ。
そうじゃなければ壊れてしまう。
それがこの子でこんなにも思う…想うなんて。
雨哥…どこか似てるのか?分かんない。
タキの手の中で消えた。
あの日のまだ小さな命。
あそこにある小さな残り…。
タキはその姿、その赤、その赤の味を忘れない。
そしてもう求めない…。もう…。
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