『ペットフード』
何時間経ったか、気にしていなかった。
必死にやっていたから。
平気とは言え、大変だった。
やっと…もうすぐ終わる。ここから最後の工程に入るのだと教えてくれた。
覚えた。最後に残ったのは…残るのは、加工するのは、顔部分。
多く見ていた部分。
可愛かった時もあったけれど、結局、大嫌いなぶぶん。
苺美の顔。

多分見た事ある顔…知ってる顔…それくらいの感覚に変わっていた。
苺美の残ったパーツ。
苺美の顔、目はもう何も見ていない。
『見なくて良い。見るな。本当…こんな顔…要らなかったじゃん。可愛い時もあったなのなぁ…残念…』と雨哥は赤を拭き取りながら思った。
最後にキレイにしてあげる。

「覚えなさい」
何度目かのタキからの言葉。
改めて集中する。覚えなくちゃ。
忘れないよ…この目に何度も何度も映った事…。全部…忘れない。
忘れてたまるか。あの日々を…。
そして今から起きる全て。
今までの苺美の全てを。
忘れない。覚える。全てを…全部を…・もう涙は出ない。
何も感じないんだもん…苺美…はもう必要ないからかな…いないし、いたとしても要らない。
「覚えなさい」の言葉で苺美の残りは無くなった。音と共に。
少しだけ気分が悪くなったが、“覚える” で消されて行く。
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