『ペットフード』
「アンタ…」と言うタキは次を言わず、少しの間を開けた。
何も続けない事に、雨哥はタキを見た。
普通の視線でタキを見る。
「ん?」と言う表情で。
タキを目を逸らし、「アンタ…さっき呼んだけどこれから…何て呼べば…」と下を向く。
友達になりたてみたい。
雨哥の顔が “明” になる。嬉しかった。
少し心を開いてくれたのかな?と思う事にする。
タキにその気がなくても、そう思いたかった…。
『苺美もこんな風に自分を思っていたのかな?』
不意にそんな気持ちが浮かんだが、もう意味がないから、すぐに捨てた。
要らない。アンタからは要らない。
「うた。雨哥です。雨哥って呼んで下さい」と雨哥は頭を下げえた。
どうも。よろしくねと。
「あっそう。まぁ、あんまり名前で呼ばないけどね…。うた…か…。優しい名前だな」
少しだけだけど、やっぱり優しく微笑んでくれたと思う。
今はそれだけで十分。
「タキさん」
雨哥の呼び掛けに、目線をくれた。
こっちを見てくれた。
「タキさんで良いですね」の言葉にタキは目線をズラす。
「タキさん」
「うるさい」
苺美なんて要らない。
タキとこれから上手くやって行く方が大切。
そっちのが…。
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