『ペットフード』
そして、雨哥は【101号室】のドアの前に立つ。
“必要以上に親しくしない”
契約書の一文。
でも今は “必要” なのだ。
大きくゆっくり深呼吸をし、【101号室】のチャイムを押した。
きっとあの部屋でも鳴っているのだろう。
ドアの向こうにタキが立っているのが分かる。
いつの間にか “気配の察知” も身に付けた。
タキは鍵を開けドアを少しだけ開けると「何?」と隙間から言う。
目は前よりは感じないが、冷たい目をしている。決して優しくはない。
「あの…大切な話があって…聞いて下さい」と雨哥は頭を深く下げた。
その姿に “軽い気持ちではない” とタキに伝わる。タキは雨哥の震えに気付いていた。
数秒間、タキは黙った。
その間も雨哥は頭を上げない。
震えも止まらない。