『ペットフード』
「実はあの日…」
震えた声から始まった。
【201号室】【101号室】で起きた全て…。
琉羽と別れてから、あの後、苺美の全てが消え、代わりにブレスレットだけが残った。
いや、ブレスレットだけじゃなかった。
苺美の残り…。
保管された苺美の1枚。
雨哥はそれも隠さず、ホルマリンの中の苺美の1枚を琉羽にも見せた。
「ちゃんと全部話して。大丈夫。全部受け止めるよ」
そう琉羽が言ったから。
「全部」って言ったから。
雨哥は全部を…。

「苺美…」とホルマリンの液の1枚を見つめる雨哥。
その目は冷たさを感じ、落ち着いていた。
初めて見る雨哥の冷たい目だった。
「苺美ちゃん(これが…)」
きっと苺美なのだろう。
あまりにも変わり過ぎて初めてで特に何も考えられず雨哥が “苺美” と呼ぶその1枚を琉羽も見つめた。
そして琉羽はすぐに決めた。
タキに自分の存在を知ってもらおうと。
雨哥に抱えさせない為に。
そして、自分の事を知ったタキがどうするのかも知りたかった。
そしてその動きで本当に証明sぎてみせると決めたから。
「愛した人の味は美味しい。そうじゃない、嫌いな人の味は不味い」
その言葉を聞き、琉羽はタキの行動次第で自分の行動もどうするか決めた。
その言葉で全て。
もし…違った時は…その時は…。
だから「タキに伝えた」と言う一文を待った。
今はそれだけを待つだけ。
『自分がいなくなったとしても…。それでもそれが俺のやる事なんだ』
もう決意は揺るがない。
『たとえ、どんなに雨哥が泣き叫んでもやるんだ』と。
『大丈夫』
琉羽の声はその為にある。
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