『ペットフード』
琉羽にタキに告げたと伝えた。
伝えてしまった。
琉羽からの返信が届くのが不安でたまらない。
少ししてから画面が知らせる。琉羽からの受信を。
いつもは嬉しいのに。あんなに愛おしいのに今は…。
呼吸を整え、そのメッセージを開封する。
【ありがとう。辛い事をさせてごめんね。今週の金曜の夜、行っていい?】
【琉羽は大丈夫?金曜日OKだよ】
少しでも、メッセージの中だけは “いつも” でいたい。
【俺なら大丈夫だよ。じゃあ、金曜の夜行くね】
琉羽も “いつも” をくれた。琉羽の優しさ。
この “いつも” を守りたい。

『金曜日の夜までになるのかな?』
2人はこの時、そう思っていた。
2人の気持ちをメッセージで一瞬ずつ保つ。繋ぐ。やめて今だけは “変わらず…”

そして金曜日の夜はやって来た。
『最後になるかも知れない』
口にしなくても2人の心は同じだった。
痛いくらい分かるんだ。
最後になるかも知れない全ての事。
2人の全てが重なる時間を超え、そして次へと動く。
最後の刻へ。
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