『ペットフード』

鍵が外れる音に、タキがドアを開けるよりも早く雨哥が走り出す。
「琉羽！」と叫び、タキの体を突き飛ばした事なんてどうでも良い。
それはタキも同じで…。
「琉羽！」
雨哥の声と体を琉羽の全てが受け止め、そのまま熱く抱き包んだ。
「大丈夫？ごめんね」
凍えそうなくらい冷たい雨哥の髪、体を琉羽の熱が支える。
「何？何があったの？何であんな事」
「大丈夫だから。来て」
琉羽に言われ見ると、壁の扉は開かれ【作業室】が見えるようになっていた。
「一緒に来て」と琉羽は雨哥の手を引き【作業室】へと進み入る。
何をしようとしているの？
何が起こるの？
不安になる。
久しぶりのこの部屋の空気だ。
あの日の苺美がまだいるように感じ、歌は呼吸を整える。