『ペットフード』
数日後。
苺美が明るい声で呼んだ。
「雨哥!」
この時から「雨哥」と呼ぶようになったんだ。急に…。
その声に苺美を見つける。
「決めた。一緒に行こう!いいでしょ?」
苺美の【進路希望】の枠には、雨哥と同じ文字が書き込まれていた。
同じ高校へ進むらしい。別に良い。

そして、高校生活の中に苺美はごくごく普通に参加して来た。
気付けばすぐ近くに苺美はいつもいつもいた。
本当に普通に。
それだけだったら別に良かった。
けれど、苺美はこの頃には少し変わって来ていた。
いつも “同じ” が多くなった。
行動も持ち物も“同じ”が増えて行く。

苺美には雨哥の知らない世界が与えられていた。
その事が苺美を突き離せない唯一の理由になる。
それがなければ、こんな子、すぐに見放すのに。
捨てれるのに…。
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