『ペットフード』
苺美にブレスレットの事、家に入った事を聞きたかったが、まずやるべき事はビーズだ。
クライアントを待たせたくない。
少しでも早くお届けをして喜んで欲しいのだ。
苺美の事は後にして、まずは依頼の作品を形にして行く。
第一優先のビーズ。
心を紛らわせる。
これから数日間は留守にしないのだ。
苺美も来る事はないだろう。
そして来させない。
テグスにビーズを通し、組み編み、形にして行く。
その一粒一粒が大切で楽しい。
重なり輝く。美しい。楽しい時間。
ずっとこれだけで過ごせれば。
その中で、琉羽に会えれば、なんて素敵な日々だろうか…。
素直でいられる。
違う。
苺美がいないだけで安定なのに…。
いないどころか勝手に入って来たなんて…。
最低…。
大っ嫌いな存在。
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