『ペットフード』
運転席から男の人が出て来た。
そして、トランクのドアを開け、抱えた。
黒いビニールのようなナイロンのような素材の物を。
男の人が抱えるように保つと、その中身は少し形を変え、抱え込まれる。
中には、形の変わるような物が入っているようだ。
『そっか。ペットフードだから…食べれる何かか…』と雨哥は自問自答する。
それは予想通り【101号室】に運ばれた。
男の人は戻って来るともう1つ同じ黒い袋を片手で持ち、トランクを閉め、車にロックを掛ける。
きっとこの後、【101号室】での作業に入るのだろう。
男の人の横顔、姿を視界の端で捉える。
右手に腕時計を着けていた。
左利きだろうか…。
職業病だろうか、雨哥は何気ない仕草やアクセサリーなどを無意識に確認してしまう。
そして、その男の人は右目の下にホクロがあり可愛く見えた。
その後、思った通り【101号室】に入り、少し経つといつもの音が聞こえて来た。
初めて外でその音を聞く。
部屋の中で聞く時と違い、もっと細かく聞こえて来た。
ザクともゴリとも、どちらでもない、その中間の音。
“ペットフード”だから何かの肉?骨?大変そう…と雨哥は鉄の階段を登り、【201号室】へ帰る。
家に帰り、下から聞こえて来る音にタキの姿を思い出した。
「またケガしないと良いけど」と呟き、次のデザインを考える。
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