アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き
1.プロローグ
「きゃっ! こないでっ!!」
静寂なオフィスのフロアで、私の大きな叫び声が響き渡る。
両手で書類を胸に抱きかかえ、顔面蒼白で体の動きを止めたまま身構えていた。
課長の机の上に、黒光りしたアイツがいる。
しかも、今まで見たことのない特大サイズ。
私はアイツと視線を合わせたまま、数秒ほど睨み合いを続けていると……
いきなり、羽を広げて飛びかかってきた!
顔に向かって、一直線に飛んでくるのが嫌でもわかってしまう。
同じ会社の同僚と、結婚を目前にしていた私だけど……
その出来事が切っ掛けで、運命の歯車が大きく狂っていく……
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