アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き
ああっ!よく見たら手ぶらだっ!
営業で外回りのついでだったら、しかたないけど……
上司が病院に足を向けてくれただけでも、感謝しないとね。
でも、お見舞いが目的だったら、いいのだけど……
すごく嫌な予感がする……
病室に足を踏み入れた課長は、周囲を見回したり天井に視線を向けている。
すぐ横で幽体離脱した私が見つめてるのも知らずに、キョロキョロと落ち着かない。
よく分からないけど、課長が胸を撫で下ろしてる。
そして、小さな声で呟いた。
「個室だし、監視カメラもないようだ……」
はあ?
いま、なんて言ったの……
私、すごくピンチじゃない!
「誰か、たすけてぇ~!!」
大声で叫ぶけど、幽体離脱した私の魂の声は届かない……