アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き
私は大きな声で叫ぶ。
でも、彼の耳には届かない……
歩みを止めずに、腕を組んだまま二人は病室を出て行った。
その姿を、私は見つめることしかできない。
ベッドで眠る私の体を背後にして、膝から床に崩れ落ちる。
目からあふれ出る涙が、頬を伝って床にポトポト流れ落ちていく。
静寂な病室で、私は声を出して泣き崩れる。
あふれ出る涙を、手の甲で何度も拭い取りながら泣き叫ぶ。
でも、悔しさと悲しさが入り交じった涙声は、誰の耳にも届かない……
結婚を破談され、部下に婚約者を奪われてしまった。
ベッドに寝ったままの状態で、いつ意識を取り戻すか分からない私の体。
やり場のない怒りと悲しさで、自暴自棄の私。
振り返って、意識のない自分の寝顔を睨み付ける。
そして、掛け布団の上から自分の胸元に顔を埋め小声で言った。
「お願いだから、目を覚まして、私……」