アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き


 開いたままの病室の扉、その先に見える廊下の壁。


「誰もいない……」


 立ち上がって顔面蒼白の私。

 ベッドの角に身を潜め、様子を伺ってると……


 しばらくして、恐る恐る姿を現した。

 廊下から覗き込むように顔を出し、病室の中を見回してる。



「えっ、うそ! お見舞いに来てくれたのっ!」



 その顔を見た私は、一気にテンションが上がった。


 地元を離れ、沖縄に仕事で出張していた弟が姿を見せたのだ。


 私は病室の入り口に駆け寄り、彼を招き入れる。

 幽体離脱した私の姿は、弟の目に見えるはずがないのは承知していた。

 でも、うれしくて黙ってられない。



「そんな所に立ってないで、中に入ったら?」




< 41 / 54 >

この作品をシェア

pagetop