アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き
開いたままの病室の扉、その先に見える廊下の壁。
「誰もいない……」
立ち上がって顔面蒼白の私。
ベッドの角に身を潜め、様子を伺ってると……
しばらくして、恐る恐る姿を現した。
廊下から覗き込むように顔を出し、病室の中を見回してる。
「えっ、うそ! お見舞いに来てくれたのっ!」
その顔を見た私は、一気にテンションが上がった。
地元を離れ、沖縄に仕事で出張していた弟が姿を見せたのだ。
私は病室の入り口に駆け寄り、彼を招き入れる。
幽体離脱した私の姿は、弟の目に見えるはずがないのは承知していた。
でも、うれしくて黙ってられない。
「そんな所に立ってないで、中に入ったら?」