アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き


 でも、弟の体をすり抜けて抱きつくことは出来そうにない。


「やっぱりね」


 彼は視線を、ベッドで眠る私に向けたまま立っている。

 幽体離脱してる姉の行動に反応は無い、弟から私は見えてないからしかたないよね。


 意を決したように、弟が歩き始めた。

 ベッド横にある戸棚の上にお花を置き、すぐ横にある椅子に……

 座らないで、私の寝姿を見下ろしてる。


 その表情は、何だか悲しそう……



「どうしたの?」


 私は声が聞こえないと分かってても、弟に話しかけてしまう。

 意識が戻らないまま、ベッドで寝たきりの姉を見てしまったのだから仕方ないよね。


「……」


 無言のまま、口を噤む弟。


 そういえば、私がこの病院に入院してるって、誰に聞いたのかな?

 この前、両親が来たとき、弟には黙ってようとコソコソ話してたような……




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