アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き
その言葉を聞いて、私は手の甲で涙を拭った。
彼が向けている視線の先を目にして、驚いてしまう。
「私が、泣いてる……」
枕に後頭部を付け、ベッドへ横になって眠ったままの私の体。
顔は目を閉じて無表情だけど、目尻から涙があふれ出ていた。
ポロポロあふれ出る涙が落ちて、枕を濡らしてる。
幽体離脱した姿で涙を流す私と、意識無く寝たきりの体が不思議な感覚でリンクしていた。
涙を流す自分の姿を見て、幽体離脱の私もあふれ出る涙が止まらない。
彼の背後にいる幽体離脱の私は、視界がゆっくりと薄暗くなっている。
足下で歪んだ空間が、自分を中心にして波紋のように広がり体が吸い込まれていく。
暗闇の中で、薄れる意識。
そんな状況でも、私は両目を瞑りながら心の中で弟のことを思っていた。
「やっぱり私は、身近にいる優しい彼が好きだ……」