アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き
「きゃっ! ゴキブリ!!」
静寂なオフィスに、私の大きな叫び声が響き渡る。
両手で抱きかかえていた書類を持つ手に力を込め、私は顔面蒼白で身構えていた。
金縛りにあったような感覚、太ももを内股にしてモジモジさせる。
体が硬直して動かないし、その場から離れることができない。
目前に課長の机、 中央にあるノートパソコンの前に置かれたネームプレト。
その上に、黒光りしたアイツがいる……
しかも、特大サイズ……
なぜ清潔なオフィスにアイツがっ!
私は心の中で、そう叫びながら目を細める。
ネームプレートの上にいるアイツと、数秒ほど睨み合いが続いて……
―― 羽を広げたアイツが、急に飛びかかってきた!!
「いや~っ! こないでぇ~っ!!」
私は悲鳴を上げながら急いで後ずさり。
慌てていたのでバランスを崩し、パンプスが脱げて後ろに転倒。
運悪く、背後に置かれていた机の角に頭をぶつけてしまう……