妖狐の花嫁は月夜を想う
「ああ、花嫁が。」

さっき私を殺そうとした狐が、私を鋭い視線で見て来た。

「おまえのせいで、仙狐様の結婚は無くなってしまったではないか。」

「す、すみません。」

「この結婚までに、300年はかかったのだぞ。すみませんで済むか!」

今度こそ、殺される!

私がぎゅっと目を瞑った時だ。


「沢治。よい。これも縁だ。」

「しかし……」

「その代わり、良い案を思いついた。」

「良い案。何でしょう、仙狐様。」

すると仙狐様と呼ばれたその綺麗な人は、私の目の前にやってきた。

「代わりに、結月が私の花嫁になればいい。」

「ええっ⁉」

私は飛び上がる程驚いた。

「仙狐様。いくら何でも、一般の人間との結婚は……」

「どうだ?良い案だろ。」

仙狐様は、私を見降ろすとニコッと笑った。
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