妖狐の花嫁は月夜を想う
すると、一匹の狐が私の方に歩いて来た。

「狐の嫁入りを見た者には、死を与えなければならない。」

「えっ⁉死ぬの⁉私!」

「仕方あるまい。我々妖狐の嫁入りは、神聖なものだからな。」

そして周りの狐達が、私に威嚇してきた時だ。


「待て。」

さっき見えた長い白髪の人が、威嚇した狐達を抑え込んだ。

「仙狐様。」

「元来、嫁入りとは目出度いものだ。そんな時に、死人を出すなどあってはならぬ。」


その人を見た時思った。

こんな綺麗な人が、この世にいていいのかと。


「娘。名はなんと言う。」

「……結月です。」

「結月か。良い名だ。今のうちに森を出て、二度とこの場所に来ない事だ。」
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