もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)


『私の両親って、駆け落ち同然で結婚したらしいの。だから頼れるような知り合いはいなくて……』




施設で育った私は


りょうと付き合い出してから


初めて色んな感情を知ったんだよ。


嬉しいこと
楽しいこと
人を愛し、愛される気持ち



もしりょうと付き合っていなかったら



私は一人暮らしだったかもしれない。





誰かの側にいて愛されることを知らずに生きていたかもしれない。






「美沙は……ずっと寂しかったんだな。ずっと…一人だったんだな。」





りょうは寂しそうな目をした。





『今は、りょうがいるから寂しくないよ。』





穏やかな時間だった。




このところ
ずっと不安だったりょうの態度や言葉も



全部なにかの勘違いだったような気がした。




だけど


そんな穏やかな時間は



すぐにかき消されてしまった……




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