もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
「高野さん!!!」
私が顔を上げると
向井さんは驚いた顔をした。
「どっ…どうしたの!?その顔……」
向井さんは
ブランコに座ったまま泣きじゃくる私の前に
しゃがみこんで
そっと両手を包みこむように握りしめてくれた。
『彼氏に……………殴られて……』
「彼氏に!?」
『はい………。』
向井さんは
信じられないと言った表情でため息をついた。
「痛いだろ?立てる??」
『はい。』
「そこに車、停めてあるんだ。とりあえず……中に乗ろう。」
向井さんは傷だらけの私の肩を優しく抱き寄せて歩いてくれた。
車の中は
甘いような、でも爽やかな、
向井さんの匂いがしていた。
運転席に座った向井さんは、助手席に座る私の膝に自分の上着を乗せた。
「とりあえず俺の家に向かうけど、大丈夫?」
まだ殴られたところがジンジン痛む。
私が頷くと向井さんはエンジンをかけた。