もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
優しい場所へ
向井さんはとても綺麗なマンションに住んでいた。
部屋は
男の人の一人暮らしにしては
素晴らしいくらい片付いていて
家具などは白か黒で統一されていた。
とてもシンプルな部屋。
「少ししみると思うけど、ごめんね。」
向井さんは救急箱から消毒液を取り出して
手当てをしてくれた。
『すいません。』
「謝らないで。高野さんのことが心配だったから番号も教えたんだし。」
向井さんは私に笑いかける。
『向井さん…本当に一人暮らしですか??』
「え?そうだよ。どうして??」
『だって…すごい部屋とか片付いてるし。救急箱とか……あるから。』
笑いながら話すと、唇が裂けるように痛かった。
「俺、男にしては細かいほど綺麗好きでさあ。友達からもよく気持ち悪いって言われるんだよ。」
向井さんの笑顔が
私の震えを止めてくれた。
私は落ち着くことができた。