もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
「他には?」
向井さんは私から目をそらさずに、全てを聞いてくれた。
帰りが少し遅くなっただけでぶたれたこと
鞄の中身や携帯をチェックされたこと
写真を破られたこと
でも、向井さんの名前があがっていたことは
言わなかった。
「ヒドイな。高野さん、これってたぶんDVってやつだよ。」
『DV?』
聞いたことがある。
ドメスティックバイオレンス……
「高野さんが付き合ってる彼のことを、悪く言うつもりはない。だけど…そういうのって簡単になおらないと思う。」
私はりょうを信じたかった。
りょうにされたヒドイことの全てを、なんとか自分に理由をつけて
認めたくなかった。
だけど、確かに
私はりょうにDVと言えるようなことをされていると思う。